<1:はじめに>
自己の脂肪注入とその治療についてご説明します。
顔の加齢による変化やその他の変形に、このような形になればという思いが生じます。ご自分の脂肪を目的部位に移すことは、医療的にご自身の組織の移植術で、きわめて安心、安全な方法です。
顔の加齢によって”フェイス・フレイル”を生じると、
1)切開フェイスリフト
2)眼瞼下垂症手術
3)自己脂肪注入 は、極めて有効な改善方法です。
その他の原因による顔の変形にも効果が得られます。
1:顔面のしわ・タルミ
⇒切開フェイスリフト、切開ネックリフト
2:瞼のタルミ:眼瞼下垂
⇒眼瞼下垂症手術、上眼瞼形成術、下眼瞼のたるみ・クマ治療
3:顔面の部分的な変化、変形
⇒自己脂肪注入
ここでは、自己脂肪注入について詳しくご説明します。




<2:自己脂肪注入は、顔のどんなところに行う?>
*加齢に伴う脂肪注入の適応部位:
*その他の適応:
・生まれつきの顔の変形
・成長に伴う変形
・ケガや手術後の変形
・歯科矯正に伴う顔の変形
・急なヤセのあとの変形 など

<3:自己脂肪注入とは>
・顔の形の改善やシワや肌質改善を目的に自分の脂肪を注入する方法です。
・腹部や上腕、大腿などから脂肪吸引の器具を用いて脂肪吸引して採取します。
・脂肪注入には、治療目的や場所によって分類すると以下の3種類があります。
1)自己脂肪注入(ミリファット(milli-fat)を含む)
増量、増高、増大を目的に行います。目的より少し多めの量を注入します。
施術後1か月程度で少し減量して生着した脂肪が、その後もおおむね年単位で維持されます。
ボリュームアップが目的であることから、一般にゲージのやや太い針で注入を行います。
2)マイクロファット(micro-fat)注入
通常の脂肪注入より細かい細片に処理して、注入します。
少しの膨隆効果と肌質改善の両方を目指します。
3)ナノファット(nano-fat)注入
脂肪組織を小片化処理して脂肪と血管成分や脂肪の間質を微細片に処理します。
おもに小ジワ~中ジワ・肌質改善を目的に注入します。
特にナノファットは細い針での注入や針でのタッピングなどの施術があります。

<4:各種の脂肪の使い分け>
1. 自己脂肪注入・ミリファットの主な対象:
・陥凹ジワ(ほうれい線, 眉間のシワなど)
・加齢による変化 (眉間~前額, 両側側頭, 両側頬部, 顔面輪郭の変形や形の改善)
・生まれつきの変形
・成長に伴う変形
・外傷や手術後の変形
・歯科矯正に伴う変形
・鼻根・鼻背・口唇・オトガイなどの形の改善 など
2.マイクロファット・ナノファット注入の主な対象:
・小じわ(口囲・オトガイの梅干ジワなど)
・前額や頬部の肌質改善/皮膚のハリ
・ニキビ跡(にきび瘢痕) など
<5:自己脂肪吸引・脂肪注入のメリット・デメリット>
メリット
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自分の脂肪を他の部位に注入移植する治療法なので、安心・安全です。
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自分の組織の注入移植のためアレルギー反応や異物反応は極めて生じにくい
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1か月後に生着した脂肪は、おおむね年余に維持されます。
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不足感がある場合は、さらに追加治療ができます。
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採取では針で採取する場合はほとんど瘢痕を残しません。多い脂肪を採取するときには2、3mmの小切開をして採取します。採取部位にその瘢痕が残りますが、目立たないようにケアを指導します。
デメリット
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注入部位に内出血、溢血斑(いっけつはん)や皮下のしこり(皮下硬結)を生じる場合があります。一般に内出血や溢血斑は1,2週間で消退し、皮下硬結は1~数か月で改善に向かいます。
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目的の量の増量や増高、シワや肌質改善が得られないときは、一定期間の後に追加を要することがあります。
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採取部位の内出血、溢血斑(いっけつはん)や皮下のしこり(皮下硬結)は、1~数か月で改善に向かいます。
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脂肪の生着が不良で、想像したな形態に至らないことがあります。⇒別途、追加注入を行うことがあります。
<6:自己脂肪吸引や脂肪注入が適さない疾患など>
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糖尿病
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膠原病
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末梢循環不全
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出血傾向のある方
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抗血栓療法、抗血小板療法(血液さらさらの薬を服用中)を行っている方 (休薬ができる方は施術できることがあります)
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免疫不全状態のある方
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脂肪の異常(脂肪異栄養症など)など
上記の状態や他の疾患などがある方は、どうぞご相談ください。
<7:当院での脂肪注入の特徴>
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診察時に、脂肪注入が適する箇所を診断します。
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脂肪注入の量によって、針やカニューレ(脂肪吸引の器具)を選択します。
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脂肪注入の目的や量、箇所によって、注入脂肪のサイズを選択します。
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一回の施術時に、複数の箇所の注入や異なるサイズの脂肪注入も可能です。
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施術後の経過を診察しますが、微調整も可能です。
<8:自己脂肪注入の施術の実際>
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手術決定:手術日時決定、写真撮影、術前検査、手術と同意書説明などの準備をする。
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自己脂肪吸引:数か所設定した吸引箇所(腹部など)から陰圧で脂肪吸引を行う。
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自己脂肪処理:吸引した脂肪を生食洗浄処理、あるいは遠心分離して注入用に調整する。(脂肪・ミリファット、マイクロファット、ナノファット)
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自己脂肪注入:設定した注入領域に注入箇所を設定して、脂肪注入を行う。
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経過観察:術後、軽度の形態の調整が可能であるため、数回の外来診療を行う。
<9:症 例>
1)ほうれい線・マリオネットラインへの自己脂肪注入
施術前 施術後
40代女性
ほうれい線が深いことの改善を希望された。
腹部から吸引採取した脂肪を調整した。
陥凹ジワであるほうれい線とマリオネットラインに自己脂肪を注入した。
深いほうれい線・マリオネットラインは改善した。
内出血や脂肪の吸収を来す可能性がある。
施術後1か月頃の量が、おおむね年単位で維持される。
2)オトガイ正中溝・オトガイ全体への自己脂肪注入
施術前 施術後
20歳代女性:
オトガイ正中の溝の改善を希望された。
正中溝の改善と共にオトガイの全体の形態の改善を目指した。
希望された形態となった。
内出血や注入脂肪の吸収を来す可能性がある。
施術後1か月頃の量が、おおむね年単位で維持される。
3)鼻根部から鼻背への自己脂肪注入
施術前 施術後
60歳代女性:
鼻根部を高く、かつ鼻筋を通すことを希望された。
鼻根部から鼻背にかけての自己脂肪注入を目指した。
希望された自然な形態となった。
内出血や注入脂肪の吸収を来す可能性がある。
施術後1か月頃の量が、おおむね年単位で維持される。









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<10:おわりに>
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顔の加齢性変化やその他の原因による変形に対する増量や増高には自己脂肪注入が最適です。
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自己の脂肪の移植であることから安全・安心です。
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メスを使用しないか、わずかの切開で行うことができます。
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実際の診察の上で、注入部位や注入量、脂肪サイズを決めます。
顔の加齢性変化やその他の原因での変形が気になれば、どうぞ診察にお越しください。ご希望とあわせて最適の部位を決めましょう。
